差し押さえ不動産の競売費用すら工面できない
ラッキーバンクの特徴と不正発覚後の結末
身内へ不正融資をしたオワコン
ラッキーバンクは2014年12月より運営開始した不動産事業を専門に扱うソーシャルレンディング会社です。
ソーシャルレンディング業界では老舗業者の一つで、ファンドの募集頻度が大きかったこともあり150億円の累計応募額実績を持ちます。
150億円突破記念ファンドを募集して間もない2018年3月2日に不正が発覚して行政処分を受けました。
不正の内容は、社長の親族が運営する会社への投資がほとんど占めていて、借り手のX社は純利益や純資産を水増しして審査を受けていました。
ラッキーバンクは借り手のX社の不正を知りながら見過ごしてファンド募集を繰り返していた問題も発覚します。
X社が保有する不動産に担保を設定していましたが、顧客へ公開していた評価額は正式な不動産鑑定評価を大幅に下回る内容でした。
ラッキーバンクは金融庁から業務改善命令が下り、その後は新規ファンドの募集を停止しています。
2019年1月に決着
ラッキーバンクは行政処分を受けてから一部のファンドで60~100%の元本償還を行いましたが、大半のファンドで長期遅延が続いていました。
2018年12月上旬に遅延ファンドを保有する投資家に対して、競売費用を捻出できなかったため、債権総額の約30%に当たる約16億円で債権を譲渡した通知を行い、2019年1月に遅延ファンドに対して約30%の元本償還が行われました。
競売費用すら捻出できない状況は悪い印象を持ちますが、競売による回収を進めた場合は、さらに長期遅延になっていたので妥当な決断だと思います。
結果的に投資家の大半が7割の損失を出す形で決着しました。
失った信用は大きく、担保評価で不正をしていたことから、償還率が非常に低い結果になってしまいました。
公式ページでは、案内をすることはなく新規口座開設ページも残されています。
不正をした借り手に依存した運営だったこともあり、今後ファンド募集を再開する予定はなく、近い将来にラッキーバンク・インベストメントは倒産する可能性が高いです。
運営会社の信頼性は乏しかった
ラッキーバンクがソーシャルレンディングを通じて150億円以上を集めたのは、フィンテック元年ともいわれる2014年にスタートさせたことと、担保評価を高く表示していたことです。
他社を含めて不正が起こった現在にスタートしていたら、運営会社の資本や実績、貸付先が偏っていたことや、開示情報の少なさから資金を集められなかったことでしょう。
慎重な投資家は、不正発覚前から積極的な投資を避けるスペックでした。
ソーシャルレンディングの中でも不動産事業は需要が高いカテゴリーで、現在も不動産事業ファンドを多数扱う業者が多数あります。
ネガティブなニュースではありますが、ソーシャルレンディング業界の膿を出すキッカケになった事例のひとつです。
管理人の総評ファンド選定を難しくさせた詐欺業者 -
私は2014年から2015年にかけてラッキーバンクへの投資をしましたが、その後はソーシャルレンディング会社が増えたことで、会社規模が小さいラッキーバンクは敬遠していました。
しかし、ラッキーバンクを信用した投資家の気持ちもよく分かります。150億円突破記念ファンドにもなった、大阪府大阪市中央区に所在する一棟オフィスビル(プロジェクト1)は以下の情報を開示していました。
弊社調査価額:11億7,000万円
設定極度額:7億5,000万円
予定融資額:5億円
根抵当権順位:第一順位根抵当権設定ラッキーバンクの評価11.7億円、設定限度額より2.5億円安い設定のシニアローンであれば、リスクが非常に低いファンドだと感じられます。
結果的に債権総額の30%程度の債権譲渡になりました。債権譲渡による割引があったとはいえ、実際の評価額は3億円もなかったことになります。ソーシャルレンディングは担保・保証の有無や事業内容だけで投資してはいけません。
運営会社と借り手の信頼性を含めて投資判断してください。
ラッキーバンクは、運営会社が身内だった借り手の不正に目をつぶったことで投資家の損失を大きくさせてしまいました。